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  • LAQUE 10th anniversary

My Tracks /高橋マキ

更新日:9月3日

京都を舞台に活躍する女性たちの軌跡 (Tracks)

そしてこれから

今年度より新しくスタートした "My Tracks"。今回は文筆家、編集者そしてNPO法人京都カラスマ大学学長である高橋マキさんの軌跡とこれからについて話をうかがい、ラクエ地下1階の和装小物を扱う「菱屋カレンブロッソ」を編集部と訪問します。


「本の虫」から、あたらしい時代の風をひと足早く編む人に

⼦ども時代のわたしは、たぶん優等⽣。でも実は、⾃分が⼦どもであることが不⾃由で仕⽅なく、退屈しのぎに物語の世界に⻑く深く潜り込んでしまう「本の⾍」でした。この⽣意気な本の⾍が、縁あって本や雑誌に⽂章を書くことをなりわいとするようになったのは、26 歳ぐらいの時。その仕事を今⽇まで続けています。


ずっと京都にいながら東京の出版社の仕事をしているので、フリーライターとしてのあり⽅は少し変わっていて、書くだけではなく、編集やスタイリングをともなうことが多いです。書く/編集する媒体(メディア)が、近年は、紙からweb、さらには⾳声や京都のまちという空間へと拡張しているのも実感しています。


iPhoneが私たちの⽣活に登場するようになった2008年以降、暮らし⽅・⽣き⽅・はたらき⽅の変化の度合いが加速してきました。これからは、さらなるスピードで世の中がアップデートし、個を拡張しながら、⼀⼈が複数を横断する⽣き⽅が世界中であたりまえになるような気がします。そんなあたらしい時代の⾵を、読者・⽣活者にひと⾜早くお届けするメディアを、今後もていねいに作っていきたいと思います。



(⽂:⾼橋マキ)


----------------- <インタビュー>

編集部:ライターになる前は別の仕事も経験されていたそうですね。

高橋さん:新卒でアパレル商社「TOMORROWLAND」に入社しました。会社が関西に大きく展開していく時期で、新卒ながら店舗販売以外にも多くの仕事を経験させていただきました。でも、やはり以前より志望していた出版編集の仕事がしたいと退社、アルバイトをしながら、京都でフリーカメラマンのアシスタントになりました。スタイリストさんやライターさんからも声を掛けてもらい、さまざまな取材現場に入ることができたのことは、私の財産です。

一般的な女性誌やファッション誌の多くは東京の大手出版社から出版されているのですが、ちょうど私のひとまわり上の世代の先輩方が関西でもフリーランスとして活躍されるようになっていたころで、その方々にかわいがってもらえたのは本当に幸運でした。その結果、一度も出版社やプロダクションに所属しないまま、フリーライターとして独立することになります。今でいう「リモートワーク」を、25年くらい前から実践しているので、ちょっと変わった経歴ですよね。

編集部:高橋さんのライターとしてのこだわりは何でしょうか。

高橋さん:よく専門分野について聞かれますが、京都、ファッション、グルメ、旅行、ソーシャル、美容などジャンルを問わず何でも書いています。読者の方も専門家ではないので、「読者に情報がきちんと伝わること」を第一に考えます。例えば「フォカッチャ」という言葉。普段カフェやイタリア料理店で外食をする方は知っているパンの名前ですが、新聞のコラムでは補足説明を加えないと、読者に伝わらないかもしれません。私が書きたいことを書くというより、「文章を届ける相手は誰なのか」を意識して言葉を選ぶことが、私のプロとしての仕事です。

編集部:それは普段のコミュニケーションでも大切なことですね。自分には当たり前の言葉でも、相手によっては伝わらないかもしれません。京都についての記事を書かれることも多いと思いますが、ここ最近は変化も大きかったのではないでしょうか。

高橋さん:最近は、そのムーブメントが本当に京都の街の人から起こっているのか、外から演出されているものなのかの区別が大事だと思うようになりました。特にコロナ渦前にまるで金の小槌のように使われた「インバウンド」という言葉で京都のまちの地図がどんどん塗り変わっていくことをどう伝えるかは、ずいぶん悩ましいものでした。


編集部:ライター業に加え、「NPO法人京都カラスマ大学」では学長を務められていますね。


高橋さん:はい。といっても、収入を得ているわけではなく、「プロボノ」といって、自分の職業能力で社会貢献するボランティアの形です。京都カラスマ大学は 2008年にスタートし、京都のまちと人と未来をつなぐ学びの場を無料で開講しています。

 

開校当初私はスタッフとして参加しましたが、2010年に代表を引き継ぐことになりました。東京のシブヤ大学から始まった、まちづくりと学びを掛け合わせた生涯学習の新しいカタチで、最近では「ソーシャル系大学」「まちづくり系大学」とも称されています。13年前、“ソーシャル”や“サステナブル”といった言葉がまだまだ一般的でなかった頃から、京都の企業、個人の寄付に支えられて活動を続けています。インターネットを使えれば誰でもひとりで参加できる仕組みなので、受講者は10代から70代までと幅広いのが特徴です。

編集部:時代をかなり先取りされていたのですね。

高橋さん:今では、SNSを介して当たり前のように人が集まれる時代になりましたね。でも、コロナ禍中の暮らしでは、逆にSNS疲れ、ネット疲れも蔓延しました。そこで昨年度は、あえてアナログに、紙の媒体「下京暮らしの手帖-Goodneighbors Note-」を発行しました。


今京都で面白いエリアがどこかと聞かれれば、事務所もある下京区ですね。例えば区の南端に位置する京都駅周辺は京都観光の入り口でホテルなども増えていますが、京都に暮らす人には駅という機能以外あまり馴染みがなかったりします。また、北端は四条通で京都一の繁華街にして祇園祭の鉾町もあるエリア、西は最近話題の多い梅小路エリア、東は鴨川と、多様な顔を持つ地域でもあります。自分たちにゆかりのあるこの下京区をもっと知りたい、知ってもらいたいと、カラスマ大学のみんなで作りあげたソーシャルプロダクトです。

「下京暮らしの手帖-Goodneighbors Note-」

詳細や入手方法はこちら:https://goodneighborsnote.stores.jp

下京区内を中心に少しずつ広めているのですが、意外にも「ホテルの社員研修に」とか「大学生のワークショップに」「認知症防止センターで使えないか」と、手に取った方がそれぞれに自分らしい使い方を自由に考えてくださるのがうれしいです。今後は学校や行政で地域を知るためのツールとしての利用や、下京区以外の地域のものを作るなど、手にした方がそれぞれに使い方を考えてくれるものに育てていきたいです。

編集部:カラスマ大学の今後の展望を教えてください。

高橋さん:私自身、学長という肩書きではありますが、無償のボランティアとして活動に携わっています。個人と企業の寄付で小さく運営している「特定非営利活動法人」ですが、実は私がこれを本業にして食べていく程度のお金を得ても問題はありません。日本ではNPO法人が金銭を得ることについてなぜか良いイメージがなく、スタッフもボランティアは無償が当たり前と思っている風潮がありますね。私はそこを変えていきたいですし、「有償のボランティア」のあり方をもっと伝えていく必要もあると思っています。

編集部:海外だとその状況は違うようですね。

高橋さん:はい。アメリカだと、学生が就職したい人気ランキング上位にNPOが名を連ねているといった状況です。大学生から「社会貢献を仕事にして生きていけるなんて、最高なのになぜ?」と、日本の現状に疑問を投げかけられたこともあります。特に、デジタルネイティブのZ世代には、2008年から私たちが考えていたけどなかなか伝わらずにもどかしかったことを当たり前とするグローバルな感覚があり、頼もしいですね。

13年前、私は「カラスマ大学=新しいメディア」の一つだと捉え、参加の手を挙げました。10年経って、私たちのこれまでの活動は、インターネットの普及により個人でも行える時代になりました。ですが、届けたい人に情報がうまく伝わらなければ継続は難しいし、個人間での些細なトラブルもつきものでしょう。そこには必ず編集力、コーディネイト力が必要です。こういった編集力が、カラスマ大学の強みになるといいなあと思っています。

編集部:カラスマ大学のような、老若男女がともに学ぶ場所は今後重要になっていきそうですが。

高橋さん:そうですね。大人の学び=キャリアアップのための資格取得だけでなく、ファッションもメイクも暮らし方も生き方も、常にアップデートすることがとても大切なのですが、皆さん口をそろえて「時間がない」と言います。

じゃあ、なぜ私たちはこんなに忙しいんだろう、それは幸せなことなんだろうか、と考えると、学びたいことがどんどん生まれてきます。私は暮らしに「余白の時間」を持つことが大切だと考えていて、コロナ渦での自粛生活はそのことを教えてくれたように思います。その余白の時間で、自分自身やまわりの人のことに思いを馳せる、関わりを持つ。そうすることで、今日より明日がちょっとだけ幸せな世界になっていくのではないでしょうか。


高橋マキ × 菱屋カレンブロッソ

ラクエ地下1階「菱屋カレンブロッソ」を訪問。店長さんからお店について紹介していただきます。


高橋さん:私は着物の雑誌「七緒」で記事を書いていることもあり、こちらのお店の商品は以前から存じあげています。こうして詳しくお話しをうかがうのは初めてなので、今回の訪問を楽しみにしていました。カレンブロッソといえば、“現代的な草履ブランド”というイメージが強いのですが、会社の創業は100年近くも前なのですね。

注)現在店内ではスタッフはマスクを着けて接客を行なっております。


店長:弊社は大正15(1926)年に初代廣田一栄が鼻緒専門店として、大阪で創業しました。先代が草履・和装バッグと業務を拡大し、現在の三代目が菱屋カレンブロッソを立ち上げました。カレンブロッソでは「カフェぞうり」という、従来コルク芯と革底で作られていた草履を、軽くてクッション性が高く水に強いEVAという樹脂の台にスニーカーに使われるゴム底で作った草履をメインに、和装バッグや小物を販売しています。


高橋さん:「カフェぞうり」という名称がラクエ世代の女性心をくすぐりますよね。どのような想いで付けられたのですか?従来の草履と比べ、素材以外にも違いはあるのでしょうか。


店長:名前の由来ですが、カフェや映画館など気軽に履いて行っていただきたいという想いから名付けました。従来との違いは、鼻緒が埋め込まれており底にすげ穴がありません。水に強く、穴から水が上がってくることもないのですが、すげの調整やすげ替えができません。


高橋さん:機能的でスニーカー感覚、ということですね。逆に従来の草履のように、鼻緒が切れたらすげ替え、底が痛めば張り替えるといったことができないのはちょっと淋しい気もします。わがままですね(笑)。


店長:実際お客様からその様なご要望が多く、すげ替え式の「カフェぞうりシュガー」もご用意いたしました。

高橋さん:すでに私たちのわがままが叶えられているとは…さすがです。選択肢があるのはうれしいですね。「カフェぞうり」は七緒の読者の間でも、とても人気があります。長く履いても疲れないという理由から人気が出たと思いますが、その秘訣はどこにあるのですか?


店長:履きやすいということで、着付けの先生などから口コミで広めていただいたりしています。履きやすさの理由は台のクッション性とゴム底の滑りにくさ、そして鼻緒ですね。菱屋はもともと鼻緒屋なので、芯材などにもこだわり、足当たりのよい鼻緒を作っています。


高橋さん:ああ、クッション性だけでなく、鼻緒にも秘密があったのですね。過去に履き慣れない草履で足が痛くなったために着物を敬遠されてしまう方もいらっしゃるので、きっと驚きの履き心地だと思います。草履の他にもさまざまな商品がありますね。


店長:バッグも色々ご用意しています。特に、箔工芸作家の裕人礫翔さんと3代目廣田裕宣のコラボレーションにより誕生した素材を使用したバッグがおすすめです。俵屋宗達の風神雷神図屏風にある様な箔の表現を本革に施しました。他には16色の革から好きな色を選んで作るオーダーメイドの鞄も人気があります。

左画像商品:CalenBlosso&HirotoRakushoのバッグ「HSB」

右画像商品:オーダーメイドのバッグに選べる16色の革素材

※画像の位置はPCから閲覧の場合。


高橋さん:着物のバッグ選びもほんとに難しいんですよね。こちらは洋服にも合わせやすいデザインです。

最後に、本日の逸品を何かご紹介いただけますか。


店長:「カフェぞうり」の定番商品が薄めの色で、着物を選ばずおすすめです。紬から小紋、よそ行きまで合わせられます。底の高さが約5センチあり、着物の裾が汚れにくい点も特徴です。

高橋さん:私は身長が高いので、低いものがあるとうれしいのですが。


店長:それでしたら「カフェぞうりラッテ」という底が約3センチの低いタイプがあります。


高橋さん:これは今の私の気分にぴったりの草履です。履いてみていいでしょうか。

今日は足袋も用意してきました(笑)。

画像写真:カフェぞうりラッテ


高橋さん:粋で大人っぽい鼻緒はありますか?


店長:先代が始めた「鎧織」というものを使用した、オリジナルの鼻緒があります。革を2ミリくらい細く裂いたものを横糸にして手機で織っています。今は1日60センチくらい織れるようになった貴重なものです

左画像商品:鎧織の鼻緒

右画像商品:(左)鎧織の鼻緒、(中)従来の和装草履、(右)カフェぞうり

※画像の位置はPCから閲覧の場合。


高橋さん:これは素敵ですね!私自身、着物をもっと着たいのですが、今は新型コロナウイルスの影響もありハレの日にお出かけする機会自体が減ってしまいました。最近は日常的に気軽に着られるリサイクル着物にハマっています。しきたりに捉われず、自分が好きか嫌いか、着ていて着心地がよいかどうかを基準に考えるようになりました。最近は自由な着方の可能性をインターネット動画などで公開される方も増えていますし、「七緒」でも現代のライフスタイルに合う着方をいつも模索しています。個人的には自分らしい着物の着こなしの可能性について考えているところです。

店長:着物を楽しんで着られる方が増えることはうれしいです。


高橋さん:カフェ草履はスニーカー感覚というイメージで、そんな着物初心者の入り口にも最適なんですが、今回お話しをうかがったカレンブロッソさんがいかに私たちユーザーの声を聞いて、わがままを叶えてくださっているということがよくわかりました。周りの着物ファンにも自身をもっておすすめしたいと思います。


店長:ありがとうございます。他にも和装用の小物など多数ございますので、ぜひまたお立ち寄りください。

※商品の詳細については店舗までお問い合わせください。



インタヴュアー:地野 裕子 / ルゥルゥ商會

ライター:澤田香織 / YEBISU DESIGN

写真:本多輝正 / LOODY


高橋さんに紹介していただいたお店


菱屋カレンブロッソ


創業大正15年の和装小物メーカー菱屋のプライベートブランド《カレンブロッソ》

コンセプトは洋風和装。和の感性と技術をベースに、洋の機能性・ファッション性をブレンドしたものづくりを目指しています。近年発売したカフェぞうりシリ

ーズの評判が高い。


フロア:B1F

業種:和雑貨

TEL:075-222-8599

営業時間:10:30〜20:30

(営業時間の最新情報はブログ等をご確認ください。)

URL:https://www.calenblosso.jp/  

ブログ :https://calenblosso.jp/kyoto/

ラクエショップページ:http://laque.jp/shops/hishiya.html

​高橋 マキ( たかはし まき) 文筆家、編集者、NPO法人京都カラスマ大学学長

フリーランスの⽂筆家/編集者。 雑誌とWEBを中⼼に、主に京都、和菓⼦、カフェ、⼯芸、継業にまつわる記事を執筆、編集する。また、NPO 法⼈「京都カラスマ⼤学」学⻑として、学びの場づくり多数。「まちを編集する」という観点から、まちとひとをゆるやかに安⼼につなぐことをライフワークにしている。著書に『ときめく和菓⼦図鑑』『京都のフォトジェニック和菓⼦』『ミソジの京都』『読んで歩く「とっておき」京都』『珈琲のはなし。』、編集者として『家族野菜を未来につなぐ』『吉⽥屋とわたしたち』、京都カラスマ⼤学名義で『下京暮らしの⼿帖ーGoodneighbors Noteー』など。

日々是京都:http://makitakahashi.seesaa.net/

京都カラスマ大学:

https://www.karasumauniv.net/


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